症例1 75歳男。多発性筋炎のためステロイドとメトソレキサート併用投与に加えエンドキサンパルス療法中、左下腿に鶏卵大の紅斑を伴う皮下膿瘍が出現した。膿汁スメアで褐色の菌糸形を伴う多数の真菌要素が認め、Exophiala sp.を分離した。組織は感染肉芽腫の像で、菌糸型を含む多数の真菌要素を認めた。イトラコナゾール1日100mg約7週間内服するも改善乏しく、ポケットを切開、開放しアスタット軟膏を外用したところ著明に改善、約6週間で治癒した。症例2 76歳男。linear IgG/IgA bullous dermatosisのためプレドニゾロンとイムランを内服中に右手背に紅色結節が出現した。示指頭大で表面に痂皮を付着し、圧迫により膿汁を排出しスメアで菌糸を多数確認、Exophiala sp.を分離した。組織では肉芽組織内に淡褐色調の胞子状の真菌要素を認めた。テルビナフィンの内服と切開により縮小傾向にあったが、心不全のため死亡した。両症例ともサブローブドウ糖寒天培地で黒色の集落を形成、mtDNA-RFLP法により症例1の原因菌はE.jeanselmeiタイプ5、症例2はE.jeanselmeiタイプ10と同定できた。二症例とも膿汁スメアで褐色の多数の菌糸が確認され、診断および経過観察において膿汁の直接検鏡が有用であった。簡便な方法であり、免疫抑制状態の個体では膿汁のスメア標本をみるべきである。