Pleurostomophora richardsiae (P. richardsiae)は2004年にPhialophora richardsiaeから移動された。パルプを青変させる環境菌として知られているが、ヒトへの感染は1968年アメリカのSwarz等の例を初発に、以来20例程が知られている。罹患は主として免疫不全患者にみられる。今回左アキレス腱周囲の肉芽腫から灰緑色の糸状菌が分離され、本菌種と同定したので報告する。【患者】70歳男性、椎茸栽培農家。外傷の既往は不明だが糖尿病の持病がある。【菌学的所見】生育はPDAで24℃、14日間の培養で直径2.5cm前後、淡褐色で毛羽立っていた。スライドカルチャーによる形態観察では、濃褐色の漏斗状collarette を持つprolificating phialideで、分岐するものが数多く見られ、褐色球形の分生子を多く産生していた。痕跡的collarette状の無色の細いphialideからはソーセージ形の分生子が観察された。【分子生物学的同定・種内多型解析】rDNA のITS, D1/D2領域の塩基配列解析を行い、両領域の結果からP. richardsiaeと同定した。本菌種の基準株を含むIFM保存株(11株)の両領域の塩基配列から、ITSで6bp, D1/D2で1bpの種内多型が明らかとなり、併せ行ったRAPD解析でも種内多型が観察された。抗真菌剤に対する感受性についても報告する。