2008 年 45 巻 p. 341-348
近年, 下水汚泥処理方法として嫌気性消化が見直され, その効率を向上させるための研究開発がなされている. 嫌気性消化の効率が向上し有機物の分解が多くなると, 汚泥内に残存する無機物の割合が多くなり, その溶解析出挙動がプロセス性能に与える影響が大きくなる. しかし, 嫌気性消化における無機物の溶解析出挙動は, 反応の複雑さなどから, モデル化の試みはこれまでほとんどなされていない. 消化汚泥内の全無機物ではリンの占める割合が高く, 溶解性成分ではPO4-P, Ca, Mgが大部分を占めることから, 消化汚泥内のリン化合物の組成に着目した既往の知見において, 析出化学種の溶解度を考慮するとともに, 投入汚泥成分からのCa, Alの放出速度を補正することによって, 投入汚泥の性状や消化槽の運転状況から無機物の溶解析出挙動を推測できる数学モデルを作成した. モデルにより導出した消化汚泥の溶解性Ca, Mg, PO4-P濃度は実測値をよく再現していた.