2024 年 5 巻 1 号 p. 56-65
少子高齢化やコロナ禍の影響を受け,鉄道事業者各社は厳しい経営状況にあるが,列車を安全・安定に運行するため,鉄道施設・鉄道車両等を適切に検査し,維持管理を行う必要がある.本研究では,地域鉄道事業者でも導入可能な低コストな軌道状態管理手法として,携帯情報端末を活用した車上からの線路巡視(列車巡視)支援方法の実用化を目指し,鉄道構造物等維持管理標準(軌道編)に定められている列車動揺や線路異常の有無などを把握するという要件に基づき,列車巡視支援アプリケーションを開発した.次に,開発したアプリケーションを用いて,複数の営業線で試験計測を実施し,得られた加速度や前方動画などの計測データの活用方法について多角的に検討した.その結果,加速度は列車動揺管理に,前方動画は机上での軌道状態等の把握に有効な見込みを得た.