東海北陸理学療法学術大会誌
第28回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: O-46
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一般口述
脳性麻痺二次障害実態調査のまとめ
*前田 勝彦万歳 登茂子後藤 浩上田 孝渡辺 覚深谷 道広
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抄録

【目的】 昭和20-40年代に脳性麻痺により機能障害を受けた人たちは、新たな機能障害(二次障害)が生じている。しかし、対応する医療は進んでいない。適切な治療時期を逃し、症状が重くなってからの対応となる場合が多い。本来の力を発揮・維持し生活していくため、痛みや痺れ・動作能力低下など二次障害を「あきらめる」ことなく、障害当事者と医療者が状況を把握し、共同して対応をすることが必要である。しかし、十分な現状把握はされていない。
 そのために、1. 脳性麻痺二次障害の実態を調査し、背景と課題を探る。2. 障害者及び医療者が適切な対応ができるように指標作りとその普及に努める。3. 行政、医療機関に提言としてまとめる。以上を目的としてアンケート調査を行った。
【方法】 大阪肢体障害者二次障害検討会アンケート内容(2000年実施)を改編し、2011年11月より2012年1月末までに文書による回答とWEBアンケートとした。愛知県を中心に医療機関、福祉団体、障害者団体、個人への協力をお願いした。なお、本調査は愛知医療学院短期大学倫理委員会の承認を受けて実施した。
【結果】 430名の回答があり、今回は20歳以上412名の結果を分析した。男性223名、女性189名、愛知県354名、岐阜県36名、三重県18名、その他。保持する手帳は身体障害者手帳401名、愛護・療育手帳208名、精神障害者保健福祉手帳3名。外出の際の移動方法は、手動車椅子にて介助移動202名、電動車椅子使用89名、自力歩行59名、手動車椅子自走22名、杖歩行8名、その他18名。日中の居場所は社会福祉施設336名、在宅91名、勤務先20名、その他であった。
 二次障害を自覚している人は57.5%、二次障害に関心のある人は74%。その内容は手足首のしびれ・痛み、動作のしづらさ、肩こり、腰痛、耳鳴り、食べにくさで40代と50代で多かった。日常生活動作低下は、二次障害ありでは85%、なしでは51%に認められた。現在または過去に就労経験がある人で二次障害ありの人は65%、就労経験のない人で二次障害ありの人は33%。信頼できる医療機関の有無では地域差はなく、あるが64%なしが30%。受けた治療内容は内服薬62%、リハビリ53%、手術22%、針灸マッサージ17%、ボトックス注射7%であった。67%の人が今後二次障害などの相談会に参加したい、または興味があると答え、自分の住む近くで、福祉制度なども同時に相談したいなどが多かった。
【考察】 就労者に二次障害が多く、日常生活、労働環境への取り組みも必要と思われた。医療機関への受診では、信頼できない人が30%もいる現実があった。十分な障害者対応が出来ていない事もあると推察される。治療内容では服薬、リハビリ、手術などが多く、リハビリテーションに多くの期待が寄せられている。相談会への希望もまた多かった。
【まとめ】 今後は1. 医療・福祉・障害当事者などの連携を図り、生活、労働環境を見直していく必要がある。2. 二次障害の予防、治療の指針をまとめ、広く周知していくと共にどの医療機関でも適切な対応がされるよう提言していく必要がある。3. 大阪でのアンケート結果と比較検討し、行政、医療機関での十分な相談体制を提言していく必要がある。

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© 2012 東海北陸理学療法学術大会
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