東海北陸理学療法学術大会誌
第27回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: P-056
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要介護高齢者の在宅における転倒と履物
*森田 慎也山本 薫前川 美香小谷 晃一村井 眞須美
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抄録

【背景と目的】転倒の大半は住居場所における屋内で発生している。当訪問看護ステーションのある南砺市は高齢化率が約3割と全国平均を上回っており、利用者の約6割が要介護度3以上、約9割が屋内中心の生活をしている高齢者である。約4割は脳血管疾患や整形外科疾患を主な疾患としている中で訪問リハビリテーションを実施している。転倒予防においては平衡機能や筋力等の内的要因の改善のみでなく、環境などの外的要因に対する指導も重要となる。外的要因の一つとして履物が挙げられる。履物は入院期において在宅での生活を想定せず、リハビリテーションを行うために選定されていることが多い。そのため高齢者は各々の生活様式に応じて履物を使用している状況にある。今回我々は自宅内の履物に着目し、転倒との関連を検討したので以下に報告する。
【方法】平成23年5月1日から5月31日に当訪問看護ステーションから訪問リハビリテーションを受けた利用者のうち、自宅内で歩行を行っている高齢者93名(平均年齢82±7.8歳、男性41名、女性52名、平均改訂版長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)20.2±7.1点、要支援者:11名、要介護者:82名)を対象に1年以内での自宅内での転倒の有無および普段使用している履物、住宅改修・環境調整の有無を調査した。自宅内での履物は主に靴下、スリッパ、屋内用シューズ、裸足等に分類し、履物ごとでの転倒の有無および場面の状況を比較検討した。
【結果】自宅での履物は靴下54%、裸足18%、すべり止め付き靴下13%、屋内用シューズ9%、スリッパ6%と、靴下を使用している例が最も多かった。自宅内で転倒した例は42%であり、未転倒例との履物の内訳を比較した結果、転倒した群と未転倒の群で履物の割合に差を認めず、履物ごとでの転倒の割合も靴下40%、裸足53%、すべり止め付き靴下50%、屋内用シューズ25%、スリッパ33%と差を認めることが出来なかった。住宅改修および環境調整を行った例での転倒の割合は29%であったのに対し、住宅改修および環境調整が非実施の場面で転倒した例は60%であった。住宅改修および環境調整を行った例で転倒の有無による履物の割合を比較した結果、未転倒であった群の靴下を使用していた割合が54%に対し、転倒した群では81%と多い傾向を認めた。また、履物ごとの転倒の割合は屋内用シューズが0%であったのに対し、靴下を使用していた例が38%と転倒しやすい傾向を認めた。
【まとめ】自宅において住宅改修・環境調整を行っていたにも関わらず転倒している例においては、使用していた履物による要因が考えられた。今回の検討においては自宅内での転倒予防のために用いる履物の優劣を立証する事が出来なかったが、靴下を使用している場合は屋内用シューズを使用するよう指導を行うことで転倒を予防できる可能性が示唆された。入院期から在宅に移行した際にも同じ履物を使用しているか、あるいは在宅での履物を想定した練習が行われているかを検討する必要がある。

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