東海北陸理学療法学術大会誌
第26回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: P-49
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人工股関節再置換術後に大腿神経麻痺を呈した一症例
*高木 清仁岡崎 誉種田 陽一渡邊 宣之
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抄録

【はじめに】大腿神経麻痺は他の末梢神経損傷に比べ、発生率が低く稀であるとされており、治療報告も少ない。今回、人工股関節再置換術(以下、再THA)後に大腿神経麻痺を合併した症例を経験し、良好な経過をたどることができたので、その経過に文献的考察を含めて報告する。【症例紹介】68歳、女性。平成4年に両側ともに人工股関節全置換術施行。平成12年、他院にて左再THA。平成18年10月、当院に右再THA目的で入院。術前の日本整形外科学会股関節機能判定基準(以下JOAスコア)は右35点、左66点であり、右股関節の可動域制限および疼痛は強く、歩行には両松葉杖が必要であった。また、右下肢の短縮を認めた。【経過】右再THA術後に大腿神経麻痺による大腿四頭筋の著しい筋力低下と大腿部の感覚障害を認めた。術後荷重スケジュールは1週間の免荷後、1/2部分荷重を開始、術後3週から全荷重を許可し、両松葉杖にて歩行可能となった。術後1ヶ月でのMMTは腸腰筋2、大腿四頭筋1レベルであった。大腿四頭筋は術後3ヶ月でMMT2レベル、術後6ヶ月で4レベルとなり感覚障害も改善、T字杖歩行可能となった。術後1年でMMT5レベルとなり、下肢筋力の左右差を認めなくなった。JOAスコアは右71点、左77点となった。【考察】大腿神経麻痺は、下腹部手術時の開創器による圧迫や鼠径部の腫瘍や血腫により発症した報告例が散見され、比較的予後は良好とされている。本症例においても術後1年で機能回復が認められ、経過は良好であった。今回、再THA後に発症した大腿神経麻痺は術中の直接的な神経損傷はなかったため、下肢延長による神経伸展により発症したと考えられる。今後、再THA症例が増加すると予想され、術前の機能低下が著しい場合には神経麻痺の発生リスクも増加する可能性があると感じた。

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© 2010 東海北陸理学療法学術大会
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