電氣學會雜誌
Online ISSN : 2187-6797
Print ISSN : 0020-2878
ISSN-L : 0020-2878
フェーヂングを蒙らぬ放送聽取方式
難波 捷吾木村 六郎
著者情報
ジャーナル フリー

1936 年 56 巻 579 号 p. 1028-1032

詳細
抄録

放送の良聽區域(Service area)といふものは,大體送信所から半徑80km程度以内の地域であつて,如何に送信電力を増しても良聽區域は増さない。
良聽區域を擴大するために送信空中線の形を變へて地表から高角度を以て上空に發射する電磁勢力を少くすることが從來考究せられてゐるが,筆者等は趣きを變へて受信側に於て之を行ふことを研究した。
此の研究に使用した裝置の主要なるものは,普通の放送聽取受信機の外に,垂直空中線と枠型空中線,それから空中線と受信機の間に挿入した位相變換器である。動作の要領け,到來電波によつて上記の兩種の空中線に誘起する起電力が90°の相差を有することを利用し,位相變換器を用ひて更に90°の相差を作り,結局之等の二つの起電力の相差を180°に直して受信機に入れる。さうすると元來之等の空中線の空間受信特性は互に異るから,若し之等が差動的に動作すると或る入射角で到來する電波は受信機には感じない。即ち地表波だけに感じて空間波に感じないので,從つてフェーヂングは起らない。
此の裝置により良聽區域を從來の2倍以上にすることは容易である。又此の裝置は簡單なものであるから,少し高級な受信機には直に取付けて使用することが出來る。

著者関連情報
© 電気学会
次の記事
feedback
Top