水文・水資源学会研究発表会要旨集
水文・水資源学会/日本水文科学会 2021年度研究発表会
セッションID: PP-A1-41
会議情報

グループA
山間で観測された全天日射量の簡易な評価法の再検討
*細田 育広
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

全天日射量は,山地森林を対象にした水文研究においてもしばしば観測される気象要素のひとつである.しかしながら山間の開地などでは,地形だけでなく樹冠層により日射が半透過的に遮られる時間帯が生じることが多く,その影響の程度を定量的に評価する必要がある.そこで,南中前後は100%の日射が期待できる一般的な露場を想定し,観測値に基づいて地形と樹木のフェノロジーに対応した簡易な日射量減衰量評価法を検討した.前報では,シリコンフォトダイードセンサーのデータを用いたが,本報ではサーモパイルセンサーを用いた.解析は,通年日 (DOY) における任意の単位期間 (Dd: 1日~1か月) において,①日射量の日変化最大値の推定,②観測値外郭探索の二系統の処理を行い,①と②の差を減衰量 (La) とした.2020年後半の概ね半年間における観測値を機種間比較すると,日積算値に大きな差は見られないものの,10分毎観測値はセンサー特性に応じて大きな差が認められた.サーモパイルセンサーはスパイク値が少ないものの,無いわけではない.本報の解析法では,観測値外郭線内に含める観測値の割合 (Ci) を設定し,それ以下の場合でも,観測最大値 (Vx) を概上限として日変化の最大値 (Vax) が決定されるが,もともとVxDdにおける天候に依存するため,VaxDdの気象条件における概略値である.また,Vxはスパイク値の可能性もあるが,見極めが難しく,VxCi設定の両方に配慮した.このため,Ci=99%とした解析結果はVxを超えた.したがってLaはやや過大評価していると思われるが,Ciが一定値以上のとき,Laは概ね一意的に収束する.調査地における設置条件では,対象にした日射センサーのLa日値は2~4MJ m-2の場合が年間を通じて多く,そのVa日値に対する割合は10~25%と推定された.本報の解析結果のCiは多くの場合設定値未満となったが,Laの季節変化は前報における同じCiに対する分布に近かった.

著者関連情報
© 2021 水文・水資源学会
前の記事 次の記事
feedback
Top