水文・水資源学会研究発表会要旨集
水文・水資源学会2017年度研究発表会
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【水環境経済学・水環境社会学】
Instagramと旅行情報誌るるぶに見られる川と山,海の関心の違い
安西 聡*青沼 ひかる*佐藤 理久白井 聡風間 聡
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p. 83-

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抄録

山はよく整備され,観光等の経済活動が活発であり,マスメディアにもしばしば取り上げられるなど関心が高いといえる.また,海ではサーフィンやダイビング等の様々な活動が注目され,こちらもまたマスメディアで取り上げられることが多い.一方で,同じ自然環境でありながら,川への関心は高いとは言えない.そのため,川において能動的な洪水犠牲や不法投棄,禁漁期の漁撈等の問題が見られる.また,川への関心を測る研究の多くは空間的,時間的に限定的なデータを用いてきた.そこで,空間的広がりをもち,時間的連続性があるInstagramの投稿と全国の観光地を記載している旅行情報誌るるぶを通して川,山,海の関心の違いを把握する.両手法の結果の比較を行い,それぞれの手法の特性を抽出する.ソーシャルメディアの一つであるInstagramデータにおいて,2015年の#川や#山,#海が付いた投稿を取得し,解析に使用した.このデータに対して,投稿数の解析やFFTによる周期性の解析,Mecabを用いたテキスト解析を行った.また,るるぶの記事に対して,観光地の取り上げ方を7項目に分類し関心の定量化を行った.結果としてInstagramの投稿数とその周期性の解析から,川と山,海の関心傾向が抽出できた.それぞれのデータの川,山,海の関心を比較するため,Instagramは投稿数,るるぶは記事面積をそれぞれ川,山,海についてまとめた.山について,記事面積の大きさと投稿数はほぼ同じである.しかしながら,海で大きな違いが見られた.Instagramの海についての投稿で鎌倉や湘南,江の島といった神奈川の地名に関連した単語が多い.よって,そのような地域に関連した投稿は多いと考えられる.しかしながら,るるぶの神奈川県版は廃版である.したがって差が大きくなったと考えられる.この比較については更なる検討が必要である.Instagramデータは若い年代が多い都市部やその周辺に集中する傾向があるため,一部都市周辺地域の影響が強く出やすい.また,るるぶの記事は都市部の自然環境をほとんど扱わない.よって,地方の影響が出やすい.そのため,二つのデータは互いに補うことができると考えられる.しかしながら,高年層のデータは含んでいないため,今後はアンケート調査等による更なるデータの補間を検討する.

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© 2017 水文・水資源学会
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