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衛星土壌水分観測の地上検証においては,面観測である衛星観測と,点観測である地上観測という異なるスケールの観測を比較するため,土壌水分の空間変動,更にはその時間特性の理解が検証において重要である.本研究は,約100㎞の空間スケールの乾燥地域において,土壌水分の空間分散の時間変動について調べ,湿潤過程においては降水によって空間分散が増加し,乾燥過程においては蒸発散によって減少する,湿潤過程と乾燥過程で非対称な空間分散の時間変化を経ることが明らかになった.更に,その変動量は空間平均土壌水分量によって変化することが明らかとなった.
本研究対象地域であるモンゴル草原は,年降水量約100mm程度の乾燥地域であり,また深層土壌への降下浸透,地表面流出による水の水平方向の移動もほとんど無いことから,大気との水交換に関係する土壌は表層のみであると考えられる.つまり,本研究の結果は,本対象地域における土壌水分の空間分散は,降水の空間パターンによって増加,形成され,土壌乾燥の進行に伴い,その空間分散は消される,そのような単純化が可能であることを示している.