メコン河氾濫原における栄養塩の輸送をモデル化することにより洪水氾濫による肥沃効果を時空間的に評価するとともに農業の持続可能性を評価することを目的とする.栄養塩輸送モデルは,洪水氾濫計算と栄養塩輸送計算からなる.栄養塩の発生源として人間・家畜および河道からの負荷を考える.栄養塩輸送計算は流達率fを用い,一定の割合で負荷が流下・流出するとして計算された.モデルの計算結果は,現地観測結果との比較および,純一次生産量と植物中のリン含有割合から推定された植物によるリン吸収量との比較から妥当性が検証された.洪水氾濫によりもたらされる栄養塩が稲作に対する寄与率が計算され,洪水氾濫による肥沃効果の分布が示された.寄与率より,無施肥の稲作が持続可能である地域を示した.