中国の爆発的な人口増加と社会経済の急速な発展に伴い食糧の需要が増加している.そのため,食糧増産が国家の主要な政策課題の一つとして挙げられている.こうした中,黄河流域では単収(単位面積当たりの食糧生産量)を増加させることによって食糧生産を飛躍的に増大してきた.しかし,黄河流域は水資源の非常に乏しい地域であり,過剰な水利用が河川の枯渇を引き起こす怖れがある.実際に,黄河流域では1972年から深刻な水不足問題に直面し,1990年代に入り河川に水が全くない現象,断流が悪化した.このような水不足の原因の一端は,灌漑農業の発達による水利用の増加が起因していると言われている.このように限られた水資源状況下に置かれた流域の持続可能な発展のためには,どの地域でどの程度の水が削減可能かなどの情報を知る必要がある.そのため,本研究では,統計資料,土地利用データ,水文モデル,を用いることによって, 黄河流域の2000年の農業水利用効率性を計測する手法を検討した.この結果,上流域における水利用の非効率性が明らかとなり,特に大型灌漑区において悪化していることが示唆された.