日本森林学会大会発表データベース
第132回日本森林学会大会
セッションID: L8
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学術講演集原稿
ナラ枯れに防除法はないのか?
*小林 正秀
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抄録

カシノナガキクイムシの穿孔によるナラ枯れは、江戸時代以前から発生していたが、先人達は被害を抑えていた。ところが、1980年代以降は被害を抑えることができなくなり、京都府では、1990年代後半には日本一の被害量が続いた。その後、被害は徐々に南下し、2000年代に京都市内でも発生するようになった。

 京都府には社寺仏閣の庭園などの貴重な緑地が多く、現場から「ナラ枯れを抑えて欲しい」との強い要望があった。そこで、演者は、カシノナガキクイムシの飼育法を確立して生態を解明し、ビニール被覆やカシナガトラップなどの防除法を開発した。そして、これらの防除法を駆使して多くの現場で被害を抑えてきた。ところが、効果がない樹幹注入剤やフェロモン剤がもてはやされ、被害を抑えることができなくなり、「ナラ枯れには防除法はない」と考える人が増えてしまった。

 ナラ枯れと同様の被害(Platypus属の穿孔によるQuercus属の枯死)は、鳥インフルエンザや新型コロナのように世界で同時多発している。ここでは、ナラ枯れ対策に焦点を当て、日本で感染症が抑えられない要因について考察し、改善策を提言する。

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