日本森林学会大会発表データベース
第131回日本森林学会大会
セッションID: T4-8
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学術講演集原稿
アラスカ内陸部の斜面位置の異なるクロトウヒ林における細根動態
*野口 享太郎松浦 陽次郎森下 智陽鳥山 淳平Yongwon Kim
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抄録

北方林面積の20%以上は永久凍土地帯に重なっており,北米では永久凍土上にクロトウヒ(Picea mariana)林が成立する.しかし,永久凍土林の樹木の成長や炭素動態には不明な点が多く,特に地下部に関する知見は不足している.そこで本研究では,アラスカ州内陸部において,斜面位置の異なるクロトウヒ林・3林分に調査プロットを設置し,イングロースコア法による細根生産量調査,コアサンプリング法による細根現存量調査を行った.イングロースコアには直径3.2 cmのプラスチックメッシュ円筒を使用し,林床から採取した蘚類の枯死部分を詰めて,2016年9月~翌年9月の1年間,各プロットに埋設した.このクロトウヒ林では,斜面下部において夏季の凍土融解深が小さく,樹木の地上部サイズも小さくなる傾向があるが,細根現存量も同様の変化傾向を示し,斜面下部の細根現存量は斜面上部の約40%であった.一方,細根生産量は逆の変化傾向を示し,斜面下部の細根生産量は斜面上部の約4倍であった.これらの結果は,斜面位置または凍土環境の違いが,クロトウヒ林の細根ターンオーバーや地下部の炭素動態を大きく変化させることを示唆している.

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