日本森林学会大会発表データベース
第131回日本森林学会大会
セッションID: S4-7
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学術講演集原稿
林業事業体から見た森林経営管理制度の問題点
*藤野 正也
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抄録

森林経営管理制度では林業経営に適した森林は「意欲と能力のある林業経営者」(以下、林業事業体)に経営管理が再委託される。事務手続きは法令等で定められているが、主伐を行う場合、林業事業体の経営上、リスクを生じさせやすい手続きがある。一つは主伐後の再造林費用である。一般に主伐時は、木材の販売収益から主伐費用を差し引いた金額が森林所有者に支払われる。森林経営管理制度ではこの金額から再造林費用(主伐後に行う植林、保育の費用)が預り金として差し引かれ、残りが森林所有者に支払われる。一般に預り金は不正経理の温床となりやすく、林業事業体内で慎重に扱う必要がある。さらに税務調査等で厳しく確認が行われるため、林業事業体の事務方への負担となる恐れがある。もう一つは、木材販売収益から主伐費用と再造林費用を差し引くと、かなり少額になると考えられる。森林所有者は山林所得税を支払い、その後も固定資産税を支払い続ける。植林するとはいえ、主伐を行うと森林はなくなるため、森林所有者の手元に森林も金銭もほとんど残らない可能性がある。このため、従来の制度以上に林業事業体から森林所有者への丁寧な説明が必要であると考えられる。

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