主催: 一般社団法人日本森林学会
会議名: 第131回日本森林学会大会
回次: 131
開催地: 名古屋大学東山キャンパス全学教育棟・豊田講堂
開催日: 2020/03/27 - 2020/03/30
無花粉スギは、花粉を飛散しないため花粉症対策に利用されている。無花粉スギでは、変異型アレルがホモ接合となるため雄性不稔となるが、野生型アレルとのヘテロ接合体は正常な花粉発生を示すため、外観から判別できない。雄性不稔遺伝子を同定し、その多様性を明らかにすることで、無花粉スギ育種素材のマーカー選抜が容易になる。本研究では、雄花で発現する遺伝子を網羅的に解析し、雄性不稔の候補遺伝子を同定した。候補遺伝子は連鎖地図上のMS1から0 cMに位置し、無花粉スギ系統ではタンパク質のコード領域に変異(塩基の欠失)があるため、機能が失われると推定された。候補遺伝子のほぼ全長の塩基配列を雄性不稔系統と全国の天然林に由来するスギの合計83個体で解析したところ、雄性不稔を引き起こす変異には少なくとも2種類あることが明らかになった。これらの変異はいずれも広く分布する共通のハプロタイプから派生したものと推定された。さらにPCR法とLAMP法によるマーカー開発を行った。今後はゲノム編集により雄性不稔の原因遺伝子を確定させるとともに、マーカー選抜により多様な無花粉スギ育種素材の探索を行う予定である。