学童期における生活空間が,児童の樹種名の認識に影響している可能性がある。そこで,本研究の目的は,児童が日常的に樹木に触れる可能性の高い,公園,教科書,校内の樹種を環境要因とし,児童が認識している樹種名との関係性を解明することである。研究対象は,神奈川県藤沢市のK小学校とし,対象学年は4年生とした。方法は,児童の行動範囲を考慮しK小学校を中心に半径1kmの範囲にある公園の樹木調査を行い,K小学校内の樹木調査(杉浦ら2015),K小学校の4年生までの使用教科書に掲載されている樹種名(杉浦ら2018)から,K小学校4年生児童が認識している樹木とその理由に関するアンケート結果(杉浦ら2014)とを照合した。その結果,児童の回答樹種と公園調査での共通する樹種数は18種,教科書の掲載樹種と共通する樹種数は26種,校庭の樹種と共通する樹種は7種であった。本研究結果の数字だけを見れば,児童が樹種名を認識する上で教科書が最も影響しているように見える。しかし,児童は様々な手段によって樹種を認識しており,日常的に触れ合う樹木の重要性が示唆された。本研究の結果から,児童の樹木の認識には様々な要因が影響していると考えられた。