林業の労働災害は年間1,500件を下回り、漸減しているが、反対に死傷年千人率は30‰を維持している。日本では、林業労働災害を防止するために、様々な労働安全衛生対策が講じられているが、労働災害を効果的に減少させることができない。近年、成功事例に学んで、それを真似るという新たなSafetyⅡの考え方が現れ、ILOが中小企業向けの労働環境改善のためにWISEを開発した。そこで、日本ですでに実践されている船内向け自主改善活動WIBを参考に、林業版WISE(WIFD)の開発を行った。WISEは、良い改善事例を知り、チェックリストに従って自分の職場を評価し、取り組める改善を自主的に行うという手法である。林業の労働環境は、森林の中であるため、リスクは現場ごとに異なる上に無数にあり、根本的に改善することは困難である。むしろ安全作業のポイントが中心となる。本研究は、林業労働災害分析結果を基に、改善の必要な項目を洗い出すとともに、優良事業体の調査から改善事例を選び出し、安全作業のポイントを「見える化」するコンセプトで、チェックリストを開発した。ここでは、チェックリストの開発に至る改良のプロセスと、林業事業体での試行結果を報告する。