日本森林学会大会発表データベース
第129回日本森林学会大会
セッションID: S9-5
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学術講演集原稿
利用の終わった草山がコナラ林を生んだ
*大住 克博小山 泰弘
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抄録

近世には草山や柴山(以降草山で代表する)が広がっていた里山域は、近代にはアカマツやコナラなどが優占する里山林に覆われる。このことから、多くの里山林は、19世紀末から20世紀以降の比較的最近に草山から推移したと推定される。先駆種であるアカマツが放棄された草山に種子更新し、森林を形成したことは容易に理解できる。他方、天然林での常在度が低く種子散布距離も限られるコナラによる森林の形成は、説明が難しい。コナラは萌芽性と繁殖早熟性が著しく高く、毎年火入れや刈り払いが繰り返される草山でも繁殖が可能で、個体群を維持できる数少ない高木種である。そのために、利用の停止した草山はコナラが優占する里山林に移行していったのではないだろうか。このように、草山の前歴が里山林におけるアカマツやコナラの優占を誘導した可能性がある。とすれば、現在の里山林の形成には、農地の生産力維持を休閑あるいは池沼の底泥や厩肥の投入ではなく、近隣の草山からのバイオマス移入に大きく頼ったという、日本列島に特徴的な農業体系の役割が大きかったと考えられる。

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