ヒノキ放置人工林の斜面において発生するホートン型地表面流が、間伐によってどのように変化するかを知るための研究方法として、処理区と対照区を設けて処理区の間伐処理を行い、対照区との比較により間伐の影響を明らかにする方法がある。処理前の処理区と対照区との降水イベントに対する応答は当然異なり、その違いは降雨イベントの特性にも依存するため、処理前に両区の流出応答を多数の降水イベントに対して比較する必要がある。本研究では豊田市水源涵養モニタリングの一環として大洞市有林ヒノキ林内に設置した2つの4×10m斜面プロットで地表面流の通年観測を行った。4~12月の降水のうちピーク降水強度が100mm/h相当を超える4降水のピーク地表面流出量はピーク降水強度の10%未満であった。イベントごとの総降水量と総地表面流出量との関係は、9月18~24日に降った台風16号を含む249.5mmの降水の前後で不連続に変化しており、流出場の攪乱があったと推定された。この降水の前と後の期間でそれぞれモデルによる再現計算を行ったところ、イベントごとの総地表面流出量は降水強度のみを入力とした単純なモデルで再現できた。