日本森林学会大会発表データベース
第127回日本森林学会大会
セッションID: P1-177
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学術講演集原稿
葉食性鱗翅目昆虫ギルドの寄主選択及び専門化に対する植物の系統と形質の影響
*阿部 智和Rajesh KumarMartin VolfMartin Libra阿部 永福島 宏晟Vojtech Novotny村上 正志鎌田 直人
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抄録

森林の植物-植食性昆虫群集において、植食性昆虫のギルドは植物の系統により影響を受ける。しかし、植物の形質には系統と相関が弱いものがある。近縁な植物間で変異に富む形質が、植食性昆虫の寄主選択や、群集構造に影響する可能性も考えられる。本研究では、葉食性鱗翅目昆虫の寄主利用を調べ、特定の寄主への特殊化するプロセスを考察した。調査は北海道大学苫小牧研究林の冷温帯落葉広葉樹林にて、2014年の5月から8月に行った。0.15haのプロット内の胸高直径5cm以上の樹木(11科19種)から幼虫を採集して室内で飼育し、成虫の外部形態と生殖器により種の同定を行った。2植物種間の系統距離と共に昆虫ギルドの非類似度が増加した。各植物種上の昆虫種内のジェネラリスト種の割合及び、葉の単位重量あたり種数には、系統シグナルはみられなかった。植物の形質としてSLA、C:N比、トリコーム密度のいずれにも系統シグナルは認められず、また昆虫群集に対する有意な影響もなかった。一方で、植物の系統は、昆虫ギルドと関係が認められた。これらの結果から、昆虫の特殊化が、植物の形質の影響を受け、植物の各分類群内で独立に起きたことが示唆された。

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© 2016 日本森林学会
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