日本森林学会大会発表データベース
第127回日本森林学会大会
セッションID: P1-153
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学術講演集原稿
小笠原のウラジロエノキ稚樹の乾燥枯死の生理機構
*甲野 裕理才木 真太朗吉村 謙一白井 誠木村 芙久丸山 温松山 秦矢崎 健一中野 隆志相川 真一石田 厚
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抄録

小笠原は同じ緯度である沖縄の約半分の年降水量であり、また過去100年乾燥傾向にあると言われ(Oka et al. 2000)、乾燥による樹木枯死がしばしば観察される。乾燥による樹木枯死の生理的主要因として、脱水から生じる道管の水切れによる通水欠損仮説(Tyree&Sperry 1988)と、気孔閉鎖による光合成産物(糖)減少による炭素欠乏仮説(McDowell 2008)の二つが主要仮説として提唱されている。また近年、樹木は柔細胞から水切れを起こした道管に糖を放出することで木部の通水機能を回復させることが明らかになっており、このことから2つの仮説は独立したものではない可能性もある。本研究では、小笠原諸島兄島の沿岸部に多く生育しているウラジロエノキの稚樹を用いて、着葉量からの樹木衰退度と、道管の水切れや樹体内の可溶性糖、でんぷん量の関係を調べた。その結果、衰退度とともに枝通水性の低下が進み、特に枝部で呼吸の低下傾向が見られたが、糖欠乏は見られなかった。調査地は砂質土壌で夏期乾燥が急激に進むため、炭素欠乏よりも、通水欠損が先行して進んだ結果と思われる。すなわち両仮説は乾燥進行のスピードと関連する可能性があり、今後さらに検討していく。

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