2011年3月の福島第一原子力発電所の事故で放出された放射性物質が降下した福島県南相馬市の人工林において,立木に含まれる放射性セシウムの分布を2012年から調べている。
スギもアカマツも枝葉と樹皮の放射性セシウム濃度が高かった。スギでは木部にも放射性セシウムが検出された。とくに樹冠に近い幹では辺材よりも心材に多く含まれていた。調査時の空間線量率が高い林分ほど,スギの樹皮や木部に含まれる放射性セシウムの濃度が高い傾向があった。事故後に展開した葉にも放射性セシウムが含まれており,着生高の低い枝ほど,新しい葉に含まれる濃度が高い傾向がみられた。
2013年に皆伐した林地にスギ苗(プラグ苗)を植栽し,1成長期間後に採取して地上部の放射性セシウムを定量した。鉱物土層中の放射性セシウム量に対する苗への面移行係数は10-3m2/kg程度であった。