日本森林学会大会発表データベース
第125回日本森林学会大会
セッションID: T02-03
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地質および地質構造に規制された山体地下水の動態解明
堆積岩山地における降雨浸透過程と深層崩壊の発生機構
*松四 雄騎山川 陽祐小杉 賢一朗高見 友佑正岡 直也糸数 哲
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抄録

2011年に紀伊山地において群発した深層崩壊では,その一部で地震波観測によって運動様式が復元され,運動開始直後からみかけ摩擦係数が大きく減少し,移動体は約20秒で速やかに20 m/s程度まで加速したものと推定された.これは基盤内の水文地質構造とその破壊特性を反映したものとみられ,降雨による深層崩壊の誘発メカニズムについて以下の仮説を提案する.斜面にしばしば観察される馬蹄形段差などの重力変形地形の表出を担う初生的な不連続すべり面は,斜面に準平行な亀裂群(破断面)と固着部(アスペリティ)で構成されている.降雨浸透に伴う亀裂内での間隙水圧の増大が,有効応力を低下させて破断面の摩擦力を減少させ,固着部への負荷を増大させる.この負荷に耐えられない場合に固着部がせん断破壊することによって,すべり面の連続が達成され,移動体全体が急激に崩落する.この仮説を検証するため,重力変形した付加体堆積岩斜面において水文観測を行った.その結果,岩盤湧水の流出特性から,基盤内に自由地下水面を形成するような地下水帯が存在することが確認され,ボーリング孔内水位の変動特性からは,亀裂内を水が流動していることが実証された.

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© 2014 日本森林学会
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