日本森林学会大会発表データベース
第125回日本森林学会大会
セッションID: P2-188
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動物
標高1,000m付近の地域に発生したナラ類枯損被害の推移とカシノナガキクイムシの繁殖
*松浦 崇遠中島 春樹田中 康隆寺島 史郎
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抄録

富山県内の同一流域に属し,それぞれ標高860m,990m,1,160mに位置する3箇所の調査地において,胸高直径10cm以上のミズナラを対象に,カシノナガキクイムシによる枯損被害を調査した。その結果,2009年または2010年から2011年までの間,成虫の穿入が継続して観察された。しかし,2012年に穿入は見られず,2013年には標高860mの調査地のみでわずかに観察された。各調査地における無被害木の本数割合は2013年の時点でそれぞれ20%,45%,95%を占め,標高が高くなるほど増加した。また,各調査地における無被害木の平均胸高直径は22.5~24.5cmであり,その多くは繁殖が十分に可能なサイズであった。調査地と周辺に発生した枯死被害木にトラップを設置して,成虫の羽化脱出を調査した。その結果,2011年に標高860mの林分のみで穿入孔当たり0.2頭が捕獲されたが,他の調査年・調査地では繁殖を確認できなかった。以上のことから,高標高地での被害は,低標高地で繁殖し飛来した成虫によって発生したものであり,無被害木が残存しているにもかかわらず,被害がほとんど発生しなくなったのは,低標高地での被害が沈静化し,成虫の個体数が減少したためと推定された。

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© 2014 日本森林学会
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