私有林における生物多様性保全を目的とした自発的インセンティブプログラムが国内外にて注目を集めており,私有林所有者の参加行動を説明する先行研究が多数存在する.しかしながら,森林経済学の分野において,効率的なメカニズム設計を検討した研究は少ない.また,実験経済学や寄付の経済学では閾値付メカニズムやシードマネーがプログラムへの参加率を高めることが明らかにされている.そこで本研究では,愛媛県久万高原町の私有林所有者を対象としたアンケート調査を行い,閾値付メカニズムとシードマネーの効果を検証する.計量分析の結果,閾値付メカニズムの効果は町全体においては観察されなかったが,町内会では統計的有意な効果が観察された.また町内会における閾値付メカニズムでは,シードマネーの導入が参加率をさらに高めることが統計的に示された.