「いつ・どこに降った雨が、どのような経路を通って河川に流出しているか」という情報は、降雨流出現象を解明するうえで有効な手がかりとなる。CREST研究「良質で安全な水の持続的な供給を実現するための山体地下水資源開発技術の構築」(代表:小杉賢一朗)においては、水量・水質の両面から山体地下水の実態解明とその利用技術に関する研究を進めている。その中で、観測の流出シグナルから滞留時間や寄与域を推定する方法として二つのアプローチをとる。ひとつは応答関数やEMMAによる従来の方法である。もうひとつは分布型水文モデルを用いる方法であり、水量・水質の観測情報を水文モデルで再現したうえで、流出モデルが表現する流出の時空間起源に関する情報を逆推定する。本研究の内容は、後者のアプローチから流出現象の解明を目指したものであり、T-SASと呼ばれる分析法を導入し、時空間起源に応じて貯量水や流出成分を分離する。本発表では、T-SASの概念と改良内容を紹介するとともに、六甲山地流域への適用に関する初期検討内容を報告する。