木質バイオマスエネルギーは単なる化石燃料の代替だけではなく、地域経済や地域づくりの視点からも評価し捉えていくことが重要である。分析対象とした岩手県紫波町では、2000年以降、現町長の理念を反映した「循環型まちづくり」が実践されている。2001年に「循環型まちづくり条例」が制定され、それに基づき「環境・循環基本計画」が策定された。この計画では、(1)資源循環のまち、(2)環境創造のまち、(3)環境学習のまち、(4)交流と協同のまち、という4つの方針が示され、モノの循環だけではなく、環境学習等を通じた町民の環境への理解を深める地道な取り組みが行われてきた。モノの循環である資源循環の取り組みにおいては、(1)有機資源循環、(2)森林資源循環、(3)無機資源循環の3つがあり、木質バイオマスの利用は森林資源循環の中に位置づけられている。木質バイオマスエネルギーの導入は、単なるエネルギー視点ではなく、公的施設を町産材で建設し併せてペレットボイラーを導入、それへ町内産ペレットを供給するといった、一体的な資源循環の思想と仕組みによって実現している点が特徴となっている。