東北地方太平洋沖地震津波によって破壊された太平洋沿岸の海岸林再生には、従来植栽されてきたクロマツや アカマツとともに、松くい虫被害のおそれのない広葉樹種の導入も検討する必要がある。本研究の目的は津波浸水範囲の立木調査から落葉広葉樹種の耐塩性を明らかにすることである。2011年秋~2012年春に岩手県普代村の普代浜海岸林、田野畑村の明戸海岸林、宮古市の栃内浜海岸林 の3箇所の津波浸水範囲において約900本の立木の生存状況を調査した。その結果、3箇所全てに認められた落葉広葉樹種、ケヤキ、イタヤカエデの生存割合は8~9割と非常に高く、アカマツの生存割合は1~4割と低かった。普代浜で認められたクロマツの生存割合は7割と高かった。普代浜で認められたホオノキ、オニグルミ、カツラ、明戸で認められたサワグルミ、ヤマモミジ、ミズキなどの落葉広葉樹種の生存割合は0~3割と低かった。このように落葉広葉樹種2種にクロマツ並みの耐塩性があることが示唆され、津波後も生存可能な植栽候補樹種として期待できるものと考えられた。