光合成によって獲得した炭素が、根呼吸として消費されるまでの時間および量を明らかにするため、コナラの2年生実生苗を対象に13Cパルスラベリング同位体実験を行った。この手法は、樹木に透明な袋をかけ、光合成産物を13Cで短期間標識することにより、炭素の樹木内部動態を解明することが可能となる。調査は完全展葉期である6月に野外で実施された。土壌面から放出されるCO2同位体比は、レーザー同位体分光計測装置と開放型動的チャンバーを組み合わせたシステムで連続測定された。結果、葉にラベリングしてから23-26時間後に、土壌13CO2放出の高いピークが観測された。その後、土壌13CO2放出は、光合成有効放射量や温度と関係し、日中に高く、夜間に低かった。つまり同化された13Cは、日中に根呼吸として多く消費された。土壌13CO2放出は日変化を繰り返しながら、2週間かけて緩やかに減少していった。以上より、実生苗の根呼吸として放出されるCO2は、新旧混合の光合成産物で構成されており、その放出パターンは日変化することが示された。根の炭素源代謝・分配は、植物の要求量・環境要因によって制御されている可能性が示唆された。