日本林学会大会発表データベース
第115回 日本林学会大会
セッションID: P3108
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北関東低山帯森林小流域における渓流水の溶存成分濃度の出水時における変化
*吉永 秀一郎阿部 俊夫釣田 竜也相澤 州平
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抄録

森林流域から流出する渓流水の低水時における溶存成分組成は、気候条件に支配された季節変化を示すが、変動幅は狭く、比較的安定している。これに対して、降雨や融雪といったイベント時の溶存成分組成は、流出に至る水文過程の変化を反映して、流域毎に異なったさまざまな変動を示すことが指摘されてきた。本発表では、茨城県中部の森林小流域における降雨イベント時の水量、水質観測結果をもとに、溶存成分濃度、特に、硝酸イオン濃度、溶存有機炭素濃度、珪素濃度の変動について報告する。 3年間に起こった30分間の雨量が4mmを越す降雨イベントを対象として自動採水を試み、17回の降雨イベント時の渓流水を採取した。採取時間間隔は1時間である。どの降雨イベントにおいても、硝酸イオンならびに溶存有機炭素濃度は流量の増加に鋭敏に反応して上昇し、ピ_-_ク流量に達した後の減水過程においては、流量に対応して濃度も減少した。個々の降雨イベントにおける流量と溶存成分濃度との間には、硝酸イオン濃度では相関が認められたが、溶存炭素濃度、珪素濃度では明瞭な関係は認められなかった。硝酸イオンならびに溶存有機炭素の増加は、降雨イベント時に土壌浸透水量の増加や地下水位の上昇によって、表層土層中のこれらの成分が洗脱されて渓流水へと流出したことによる。一方、珪素が降雨イベント時に濃度が低下するのは表層土中の土壌水の流出量の増加ならびに雨水による直接的な希釈によるものと考えられる。 なお、全体として見た場合、珪素濃度と流量との間に負の相関が認められるのは、珪素の動態が生物的因子を含まない地球化学的要因によって支配されていることを示している。これに対して、硝酸イオン濃度、溶存有機炭素濃度と流量の間に一定の傾向が認められないのは、これらの成分の生成がより複雑に気候、植生、微生物などの要因に支配された生物地球化学的要因に支配されていることを示唆している。

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© 2004 日本林学会
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