日本林学会大会発表データベース
第115回 日本林学会大会
セッションID: P3025
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造林
松くい虫被害跡地に植栽された広葉樹10種の初期成長
*矢部 浩
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キーワード: 広葉樹, 初期成長
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抄録

1.目的近年、公共事業等での広葉樹種の造林、既存の里山林における質の高い広葉樹林への誘導を目指した林相改良が盛んに行われるようになってきた。しかしながら、広葉樹造林樹種の立地環境に対する適応特性は十分に解明されておらず、また、初期保育においても未だその技術が確立されていないものが多い。質の高い森林への回復が急がれる松くい虫被害跡地に10種類の広葉樹と対照樹種としてヒノキを植栽し、植栽樹種個々の特性を明らかにするため、初期の生存率及び樹高生長量等について比較した。2.方法調査地は、鳥取県内の2箇所に設定した。施工前の植生は、ヒサカキが優占し、高木性樹種は生き残ったアカマツ、コナラ、ヤマザクラなどが認められたが、本数は僅かであった。調査地は1998年の秋に前生のアカマツ生立木及び枯損木、灌木等を伐倒し、1999年3月に10種の広葉樹及び松くい虫被害地における樹種転換の代表的な樹種であるヒノキを植栽した。植栽広葉樹種はケヤキ・ヤマザクラ・クヌギ・クリ・コナラ・ミズメ・キハダ・シラカシ・スダジイ・イヌエンジュとした。供試苗は全てポット苗を用い、ha当たりの植栽本数が4,000本となるよう植栽した。配列は水平方向に樹種毎、傾斜方向1列に20本づつ植栽し、横に隣接して反復区を設けた。植栽後は下刈りを年1回行っている。植栽後は、各個体の樹高及び根元直径を1成長期ごとに測定し、生存率と各種被害の発生状況を半年毎に測定した。3.結果植栽から4成長期を経過した時点での生存率はキハダ、ミズメ、イヌエンジュが80%以下となった。樹高及び根元直径の成長はヤマザクラ、クリ、スダジイがヒノキに比べ大きな成長を見せた。一方で、クヌギ、コナラ、キハダ、イヌエンジュは樹高成長、直径成長ともにヒノキに劣り、特にイヌエンジュの成長は芳しくなかった。雪害の発生状況は年によりバラツキがあるが、クヌギとスダジイに多くみられた。特にスダジイでは、植栽後5年間で植栽木の半数以上に被害が発生した。また、クヌギとスダジイでは被害形態が異なり、クヌギでは被害の半数が枝折れや枝抜けであったのに対し、スダジイでは幹折れが80%以上であった。雪害が直接の原因となって枯れた個体はなかった。

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© 2004 日本林学会
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