日本林学会大会発表データベース
第115回 日本林学会大会
セッションID: P1040
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生態
東京農業大学富士畜産農場におけるミミズの種組成
*喜多 知代坂井 宏行金子 信博河原 輝彦
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抄録

1.はじめに森林の基盤となる土壌を支えている土壌動物は、森林における物質循環過程の中で分解者の役割を担っている。代表的な土壌動物であるミミズは日本の多くの土壌で見ることができる。ミミズと土の関係についてはDarwin(1881)の研究以来、ヨーロッパのツリミミズ科(Lumbricidae)でよく研究されており、土壌の肥沃化など土壌生態系において重要な役割を担っていることが明らかにされてきた。しかし、日本で見られる多くのミミズはフトミミズ科(Megascolecidae)であり、森林の林床で見られるミミズも、そのほとんどがフトミミズ科である。林床で多く見られる種は主に土壌の表層に生息するEpigeic種(表層種)であり、生育期間は1年である。日本で優占していると考えられるフトミミズ科のミミズは、ヨーロッパで優占しているツリミミズ科のミミズに比べ,その分類学的および生態学的研究は極めて遅れている。今回は、今後ミミズの森林生態系内における機能を研究していく上での基礎研究を目的に、東京農業大学富士畜産農場付近の森林でミミズの群集調査を行い、現在日本で石塚(2001)によってよく研究されている東京産フトミミズ科のデータと比較し、ミミズ群集の特徴を検討した。2.調査方法 ミミズの採集は、東京農業大学富士畜産農場付近のスギ人工林・ヒノキ人工林・マメザクラ林において、2002年5月から2003年11月にかけて積雪の時期を除き毎月行った。 各林地に20m×20mのプロットを設定した。毎月50cm×50cmのコドラートを深さ15cmまで10ヶ所ずつ掘り、掘り出した土壌からハンドソーティング法によってミミズを採集した。 2002年においては、土壌を掘り出した後のコドラートに忌避剤散布法を同時に行い、1%ホルマリンを3ℓ散布した。30分後に這い出してきたミミズを採取した。種の同定は、成体および亜成体標本を解剖し、その外部形態及び内部形態を観察し、石塚(2001)にしたがって行った。3.結果・考察富士農場においては、2002、2003年ともにツリミミズ科よりもフトミミズ科が多く確認された。このことからも、富士農場ではフトミミズ科が優占していると考えられる。ミミズはヨーロッパのツリミミズ科(Lumbricidae)によって、土壌での生活場所や食性などによりEpigeic種(表層種)・Anecic種(浅層種)・Endogeic種(深層種)の3グループに分類されている(Bouche,1977)。富士農場でも、この3種が確認された。その中でも、Epigeic種が多かった。その個体数の季節変化は春に幼体が確認された後、夏に向けて急激に増加し、冬に向けて確認されなくなった。現存量の季節変化も同じような傾向を示した。フトミミズ科の幼体は春に確認された後、6月頃をピークに冬に向けて減少していった。8月に1度増加したのは、来年以降に成体となる越年生種の幼体が確認されたためではないかと考えられる。4.引用文献 石塚小太郎,2001.日本産フトミミズ属(Genus Pheretima s.lat.)の分類学的研究.成蹊大学一般研究報告,33(3).

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© 2004 日本林学会
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