日本林学会大会発表データベース
第115回 日本林学会大会
セッションID: P1014
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生態
ブナ南限付近(紫尾山)に生育するブナの光合成特性
*楢本 正明中山 朋子斎藤 秀之水永 博己藤原 一絵角張 嘉孝
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抄録

ブナは、北は北海道黒松内低地から南は鹿児島県高隈山の範囲に分布しており、本研究で対象とした紫尾山は南限の高隈山から、北西に約70kmの場所に位置している。紫尾山のブナ林は林木遺伝資源保存林にも指定されており、学術的にも重要である。温暖化が懸念されるなか、南限付近における植生への影響は深刻であることが予想され、学術的にも貴重な群落を保全するための基礎的な情報を得るだけでなく、その動態を継続してモニタリングしていくことが重要であると考えられる。本研究では、新潟県苗場山(苗場山におけるブナの生育上限付近:1600m)に生育するブナと比較しながら、南限付近である紫尾山のブナ光合成特性について報告する。葉面積は陽葉・陰葉ともに、苗場山の陽葉と比較して極端に小さい。陽葉を比較した場合、紫尾山の方が比葉面積(SLA)は小さく、葉が厚いことを示している。陽葉・陰葉の光飽和点は、それぞれ700と200 micromol/m2/s 程度であった。温度24℃における最大光合成速度(PNmax)は、陽葉が8.1 micromol/m2/s、陰葉が2.3 micromol/m2/s で、苗場山の陽葉(7.3 micromol/m2/s)と比較して、紫尾山の陽葉の方がやや高かった。温度20℃以下における暗呼吸速度も、紫尾山陰葉・苗場山陽葉・紫尾山陽葉の順に高くなり、この結果はSLAの結果から葉の厚さを反映していると考えられる。しかし、より高い温度においては紫尾山と苗場山の陽葉の暗呼吸速度はほぼ同じであった。また、最適温度はいずれも20℃程度で生育温度環境の違いによる差は確認されなかった。

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© 2004 日本林学会
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