日本林学会大会発表データベース
第115回 日本林学会大会
セッションID: E33
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T3 人間活動下の森林における動物群集の多様性・生態的機能の保全
広葉樹二次林における除伐、間伐が甲虫群集に及ぼす影響
*大橋 章博
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抄録

 森林がもつ様々な機能に対して社会的なニーズが高まる中、生物多様性の保全に対する期待も大きくなっている。一方で冷温帯地域の多くはすでに針葉樹人工林や広葉樹二次林に置き換わっており、これら森林がもつ生物相維持機能を高めるためには、これらを適切に管理(施業)することが重要である。しかし、一般的に行われている除伐、間伐、皆伐、植栽といった森林施業が生物多様性に与える影響について解析した研究例はほとんどみられない。一方、昆虫類は地上で最も繁栄した生物であり、種数、個体数とも多く食性も多義にわたるため、自然環境の状態や変化を昆虫類を用いて評価する試みがおこなわれるようになってきた。 そこで、二次林における森林施業が生物相に及ぼす影響について知るため、除伐、間伐を行った二次林でマレーズトラップを用いた昆虫相の調査を行い、甲虫群集について種数および種構成の違いを比較した。 その結果、カミキリムシ類の種数、個体数、多様度指数は、最も人為的撹乱の大きいと考えられる若い二次林で最大となり、逆に古い二次林で最も低くなった。 間伐の影響についてみると、古い二次林では種数、個体数、多様度指数などに大きな差はみられないが、ミズナラなどの枯れ木に棲息するクロホソコバネカミキリや大径木の樹洞などに棲息するベニバハナカミキリといった種が間伐区では欠落していた。また、やや古い二次林でも立枯れに依存するクリイロシラホシカミキリが間伐区では欠落していた。幼虫の棲息場所について比較すると、間伐を行った林分では対照林に比べて、立枯れや大径枯死木に依存する種の割合が低くなった。これは、間伐をおこなったことにより、林内に枯死木が提供されなかったために、これらに依存する種群が欠落、衰退していったと考えられた。 除伐の影響についてみると、除伐をおこなった若い二次林では対照区に比べ、種数、個体数ともに多かった。これは除伐により枯枝や伐倒木が森林内に大量に発生したため、これらに依存する種が一時的に増えたのではないかと考えられた。 今回調査した二次林では、間伐により甲虫類の多様度は低くなった。この理由として、調査区の林床にクマザサが優占していたことが考えられた。このため、間伐をおこなっても稚樹の更新がおこなわれず、逆に下層が貧弱となったために、カミキリムシ相、ハムシ相が単純になったと考えられた。

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© 2004 日本林学会
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