日本林学会大会発表データベース
第115回 日本林学会大会
セッションID: E23
会議情報

林政 III
森林空間への多様な要請と新管理システムの形成
?イギリスのNew Forest Committee分析を中心に?
*岡田 久仁子由井 正敏岡田 秀二
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

1 研究目的 森林への、多様な人々による多元的ニーズをいかに実現するかが今日の大きな課題である。本研究は、それらの課題について、地域性を踏まえつつ調整組織を新たにして対応しているイギリスのNew Forest地区に学ぼうとするものである。2 対象地の概要 New Forestは、イングランド南東部に位置する広大な地域である。そこに年間2000万人もの観光客がカントリーサイドを楽しみにやってくる。その景観は、1世紀もの歴史をもつ入会利用によって保たれてきたものであり、Commonersの生活を守ることがすなわち地域の保全につながるという共通認識のもと、さまざまな管理システムが構築されている地域である。3 分析 ・New Forest Committee基軸の調整段階 New Forestへのパブリック・アクセスの増加とForestの保護管理強化の必要性が強く認識され、1990年に、Forestを含む地域全体の管理をおこなうNew Forest Committeeが設立された。The Committeeは、地域の保全について責任を持つ9つの法定組織で構成され、いずれの組織からも独立した議長と事務局によって運営される。 The Committeeの調整組織としての特徴は、New Forestの管理についてその方針・計画さらには管理方法とその実施過程にまで、事前の段階で遂行されるところにある。そしてそれはStrategyとしてまとめられる。 2ヵ月に1度開かれる公開の会議では、地域の保全・管理についての討議を行い、その場で解答をみいだせるものは結論を出し、検討を要するものについては担当者を指名して継続する。さらにこの会議では15分間のPublic Participationという時間が持たれ、住民誰でもが意見を述べる機会が与えられている。 2003年に改訂された現在のStrategy策定には、2年間以上にわたって100近くの組織や個人の利害関係者によって検討され、その結果策定されたものである。 Strategyは、Forestの保全に影響を与える広範な問題、自然保護、景観、文化遺産、農業と入会慣行、交通、レクリエーション、その他多方面にわたってカバーするものであり、個々の方針は、それぞれ連携して対処すべき関連組織によるWorking Groupによって作成された行動計画に基づき実施に移される。また、この過程で生じる問題、新たな課題が、次期Strategyに反映される。 こうして、計画-実行-事後の各段階においてthe Committeeの調整が機能しているのである。

著者関連情報
© 2004 日本林学会
前の記事 次の記事
feedback
Top