日本林学会大会発表データベース
第115回 日本林学会大会
セッションID: E13
会議情報

T11 森林をめぐる協働・パートナーシップはどこまで進んでいるのか?―現状と課題―
市民参加による森林づくり活動の現状と課題
参加者へのアンケートによる効果測定
*青柳 かつら佐藤 孝弘小林 順二
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抄録

1.はじめに
 近年、市民参加による森林づくり活動が注目されている。こうした活動は市民の自主性に基づくものであり、参加者の意識に着眼して活動の現状を把握し、課題を明らかにすることは、運営改善に方向性を与え、活動の今後の発展に役立つ。そこで本研究は、市民の参加目的に対応させた活動の効果測定を行い、これに影響を与える要因の分析から、森林づくり活動の課題について検討した。
2.方法
 参加目的として森林の手入れ技術・知識習得への指向の高い(青柳,2003)間伐ボランティア「札幌ウッディーズ」の会員(51名)を対象に、郵送法によるアンケートを行った。質問内容は、_丸1_各自の技術能力(A活動開始時、B現在、C目標)、_丸2_活動満足の条件である。回答者の属性は記名を基に特定した。各自の技術向上に影響を及ぼす要因を明らかにするために、技術向上比率(B/A)を従属変数、年齢・活動経験年数・出席率・目標(C)・向上期待比率(C/B)を説明変数とする重回帰分析を行った。
3.結果と考察
 会員39名から回答が得られ、有効回答数は38(回答率74.5%)であった。回答者の技術能力の平均は、1.74(Aの平均)、2.81(Bの平均)と能力レベルの向上が見られた(t=5.56、p<0.01)。赤池のAICが最小になることを考慮し、「出席率」と「目標」が有意な変数として残った。係数の符号条件から、出席率の高い人、目標の設定レベルが高い人は、そうでない人よりも技術向上比率が高い傾向があること、「出席率」と「目標」は、他の変数と比べ技術向上比率に高い影響を与えること、標準偏回帰係数より2者の影響の程度はほぼ同じであることがわかった。
 活動への出席は会員の自主性に基づくと考えられるため、各自の出席率を高めるには、活動への満足が生じる条件を把握することが重要である。「満足な時」では「知らないことを学んだ時」が最多81.6%、一方、「不満足な時」では「作業時間が不足する時」が最多50.0%であった。ゆえに、新技術や新知識の習得を促す学習会等の企画、最適な作業時間の検討とその確保といった運営改善が、会員の出席率向上に役立つことが示唆された。
 目標の向上も同等に重要である。本結果が回答者の主観評価に依ることに留意し、上記の学習会等の際には、各自の能力について林業技術者等からの客観評価を経て、適正な「より高い目標」とその達成意欲が得られるような機会も設定されることが望ましい。

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© 2004 日本林学会
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