日本林学会大会発表データベース
第115回 日本林学会大会
セッションID: D17
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T8 森林土壌におけるガスの動態
タイ北部熱帯季節林の丘陵性常緑林における土壌呼吸温度反応特性
*橋本 昌司鈴木 雅一tantasirin chatchaithangtham nipon
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キーワード: 土壌呼吸, 地温, 熱帯林
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抄録

森林土壌には大量のカーボンが貯蔵されている。土壌呼吸の温度反応特性は地球温暖化と土壌との相互作用を考える上で不可欠なものである。年間を通じ温度変化の小さい熱帯季節林においては、現地観測では土壌呼吸の温度反応特性を得ることができない。そのため、熱帯林における土壌呼吸の温度反応特性の報告例はきわめて少ない。本研究では、熱帯季節林において大型土壌試料を採取し、実験的に土壌呼吸の温度反応特性を測定した。タイ王国北部チェンマイ市近郊のKog-Ma試験地(18°' N, 98° 54' E 標高 約1300m)の土壌を不攪乱で採取し(直径20 cm, 長さ40cm)、実験を行った。Kog-Ma試験地では1998年から土壌観測が行われており、その季節性は土壌水分によって決められていることがわかっている(Hashimoto et al. 2004)。採取した土壌サンプルを、Hashimoto and Suzuki (2002)の考案した土壌呼吸測定システムをもちいてインキュベーションし、土壌呼吸温度反応特性および深さごとのCO2ガス発生量を測定した。本システムはサンプルカラムにホースを巻き、恒温水を流すことで大型土壌サンプルの温度をコントロールすることができる。温度伝達・ガス移動の遅れを考慮し、サンプルの温度がそれぞれ12 ℃ 、22 ℃ 、32 ℃ で定常になった時の土壌呼吸量を測定し、土壌呼吸の温度反応特性をもとめた。測定は温度を12 ℃ 、22 ℃ 、32 ℃ と上げ、その後22℃ 、12 ℃ と温度を下げて行った。また本システムは、非定常の温度変化に対応した土壌呼吸量変化も測定することができる。土壌サンプルの温度を22 ℃ から32 ℃ に変化させ、それに対応して変化する土壌呼吸量と、サンプルカラム内のCO2濃度を測定した。図2にサンプルの平均温度と土壌呼吸の関係を示した。熱帯季節林の土壌も他の生態系土壌と同様に、温度に対して指数関数的反応を示した。指数関数で近似し、その結果を用いてQ10を計算した結果、約2.2程度であった。温度上昇・下降過程において、若干のヒステリシスが見られた。図 3に温度変化に伴う土壌呼吸量およびサンプルカラム内のCO2濃度の非定常変化を示す。上昇・下降温度変化に対して土壌呼吸量は素早く反応し、時間単位での遅れは見られなかった。熱帯地域の地球温暖化による温度上昇は、寒帯地域に比べて小さいと予想されている。しかしながら、土壌呼吸は温度に対して指数関数的に反応する。そのため温度の高い熱帯地域における土壌呼吸量の地球温暖化による変化量は非常に大きいと考えられる。

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© 2004 日本林学会
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