日本林学会大会発表データベース
第115回 日本林学会大会
セッションID: C20
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T13 日本におけるLTERネットワークの稼動
照葉樹林のLTER
綾リサーチサイト
*齊藤 哲小南 陽亮
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抄録

照葉樹林におけるLTERサイトの綾リサーチサイトを紹介し, LTERの有効性などについて論じた。綾リサーチサイトは1989年に宮崎県綾町の宮崎森林管理署中尾国有林2093林班(約北緯32°03′,東経131°12′,面積約109ha)に設置された。年平均気温は14.2℃,年降水量は3070mmで,林相はイスノキ・タブノキ・常緑カシ類が優占する成熟した照葉樹林である。演者らは綾リサーチサイトの中の4haの固定プロットにおいて高木性・亜高木性樹木を対象に個体群に関する調査を継続している。綾リサーチサイトは,1993年9月に九州を通過した大型台風13号により大きな撹乱を受けた。この台風は,最寄りの宮崎地方気象台の観測史上最大級の規模(最大瞬間風速57.9m/s)のものであった。その後の解析で,綾リサーチサイトでの台風13号による撹乱はおよそ100年周期の稀なものであったと推定された。LTERの意義として,生態系の長期間にわたる変動・動態を把握できる点に加え,稀なイベントが生態系に及ぼす影響の評価が可能になる点が挙げられる。綾リサーチサイトの例では,1989年からセンサスが行われていたため,1993年の台風13号前後状態を把握でき,撹乱の定量的な評価が可能であった。成木クラスの枯死率は1993年台風13号による撹乱を受けた期間で2.7_%_であり,撹乱を受けていない期間の1.3_%_に比べわずかに高いだけであった。また,台風に対する成木クラスの反応が樹種により異なる点も明らかにされ,多様な樹種の共存における台風の重要性も示唆された。LTERとしての長期的な視点にたった観測体制が整っていたからこそ,100年周期の稀なイベントをとらえ,その影響を定量的に評価できたといえる。

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