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第114回 日本林学会大会
セッションID: F11
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国営武蔵丘陵森林公園におけるコナラ二次林の空間分布
*安齊 美帆渡邊 定元
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抄録

国営武蔵丘陵森林公園(以下「森林公園」という)は薪炭林などの二次林であった樹林をレクリエーション林に利用しているもので、1974年に供応が開始された。公園内の林分を評価し適切な管理を行うには、二次林の遷移とそれに伴う林分構成を把握する必要がある。本研究は公園管理の基礎研究として、二次林の極相林への遷移段階を区分し、それぞれの区分の林分構成を明らかとすることを目的とした。 調査地の森林公園は、埼玉県の比企郡滑川町と熊谷市にまたがる面積約304haの国営公園である。標高40__から__90mの緩やかな傾斜の丘陵地であり、関東地方の代表的な二次林であるコナラ林、アカマツ林が多くみられる。 二次林の遷移段階および林形区分の方法として、人手の加えられた程度によって二次林を10区分する「二次林自然度」を定義した。自然度10から8は公園管理の開始以来人手が入っていない林分であり、自然度7は以前若干手が加えられ、現在は放置されている林分である。よって極相への遷移が進行していると考えられる。特に自然度10から8の区分は、調査地の極相林冠構成種となるカシ類、特にシラカシの樹高を主な基準とした。なお自然度8にはササが優占し、下層植生が極端に少ない林分も含めた。 自然度6から4は手入れなどの管理がなされている林分であり、その程度によって区分した。 自然度3から1は現在森林公園に存在していない25年生以下の雑木林再生林である。さらに各自然度において、林分の優占種によってaコナラ林・bアカマツ林・cアカシデ林等の3つに区分した。 踏査によって林分をこの自然度に区分し、自然度10から7のコナラ林についてプロットを設置し毎木調査を行なった。樹高0.3m以上の木本個体について樹種・樹高・枝下高・胸高直径(胸高がとれなければ0.2m高の直径)・位置を測定した。樹高0.3m以下の木本個体については樹種と個体数のみ測定した。空間分布の解析には、渡邊(1985)の順位係数およびSynusiaを用いた解析手法を援用した。順位係数は本来極相林における概念であり、出現した各樹種の最高樹高を、当該群落における最高樹高との相対値であらわしたものである。今回は0.3m以上の出現木本個体すべてについて順位係数を求め、それをもとに群落を上からM1__から__M5-Syの5つのSynusiaに分けて解析を行った。 自然度区分の結果、自然度10と定義できる林分はわずかで、その多くがコナラ林ではなくアカマツ林の倒木がみられる林分であった。自然度9でも10に近いコナラ林では、フジがまきついて立木したまま枯死したコナラや、枯れて倒れているコナラがみられた。また森林公園となってから手を加えていない林分の多い北地区では、ほとんどの林分の林床以上にシラカシが生育しており、自然度8のうちササが優占し他の下層植生が極端に少ない林分でもシラカシが生育していた。このことから、二次林を放置して約30年経った林分には、極相林冠構成種が進入してくることが明らかとなった。 各プロットのカシ類以外の共通の植生としては、ヒサカキがM5-SyからM4-Syに多く、下層植生の極端に少ない自然度8ではM3-Syまで優占していた。そのほかにアオハダ、ヤマウルシ、ヤマツツジ、シロダモ、ヤブコウジなど、二次林を構成する種が多く共通していた。 出現種数に関しては、M2-Syの出現種数が自然度8では0であるのに対して、自然度9では上層を占められなかったコナラやそれにまきついているフジが現れていた。M5-Syの出現種数は、自然度8のササが優占している林分を除いて25種以上出現しており、M1-SyからM4-Syまでと比べて格段に多い。これは傾向として捉えられる。二次林は上層の樹木も成長を続けており、林分の最高樹高が変動する。これによって下層の限界樹高に達した樹木がM4-Syに含まれる場合とM5-Syに含まれる場合がある。しかし今回調査した林分は最高樹高18.8mから19.5mのコナラ林であり、ある程度の年数を経て、限界樹高に近い林分であれば充分調査は可能である。以上のことから、極相林構成種を基準に区分した上位の自然度ならびに、順位係数の概念を援用して行うSynusia区分による空間分布解析は、二次林の動態を捉える方法として充分使用可能であるといえる。

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© 2003 日本林学会
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