日本林学会大会発表データベース
第114回 日本林学会大会
セッションID: F06
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生態
年輪解析を用いた落葉広葉樹2次林における蓄積量の年変動
*佐々木 泰三金澤 洋一小南 裕志
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抄録

1.はじめに 地球温暖化が大きな問題となっている今日、森林の持つ炭素蓄積機能が非常に注目されている。森林の炭素固定量の定量化に関しては気象学的、あるいは生態学的な様々なアプローチがなされている。その中で、年輪解析を用いて森林の炭素蓄積量の変動を長期にわたり推定することは、他の方法との比較の上でも重要な情報をもたらすであろうと考えられる。また、長期にわたる炭素蓄積量の解明は、森林の成立過程を明らかにすることにつながる。森林の動態を論ずる上で、対象の林分の成立過程を明らかにしておくことは極めて重要なことである。特に過去に大きな撹乱があった2次林でその成立過程を明らかにし、現在の状態を把握することは、将来の森林の炭素蓄積量を推定する上でとても意味のあることである。関西以西には落葉広葉樹二次林が多く存在するが、年輪解析と大規模な毎木、伐倒調査のデータを総合的に評価できるところは多くはない。本研究では、森林の長期的な炭素蓄積量推定の一環として過去15年間の炭素蓄積量の変化を推定した。2.試験地および方法 試験地は京都府相楽群山城町の山城試験地(34°47‘N、135°51’E)である。試験地はかつて禿げ山であり、明治時代の治山緑化工によって植生回復した面積約1.7haの落葉広葉樹二次林であり、主要樹種はコナラ・ソヨゴ等である。試験地は胸高直径(DBH)3cm以上の全樹木に関して1994年と1999年に毎木調査が行われ、2000年と2001年には毎木調査の結果に基づき主な樹種とその直径階を考慮して20種(落葉樹9種、常緑樹11種)、46本について伐倒調査が行われた。これを用いて現存量推定のための相対成長式が落葉広葉樹・常緑広葉樹・針葉樹について求められた。(後藤,2003,投稿中) 本研究では、このとき伐倒した調査木の中から林冠部の大半を形成し、調査地の優占種となっているコナラ(6本)を試料木として選び、その年輪から過去15年間の幹の直径・蓄積量の年変化を求めた。幹の直径変化は、地上高30cmで切断した円盤を用いた。コナラが伐倒された2001年を基準として4方向の年輪幅を1年ごとに0.1mmの単位で実体顕微鏡を用いて測定し、平均値を幹の直径と考えた。前年の直径は当年の直径から前年成長した年輪幅を引いて求めた。各年の蓄積量は以下の式から求めた。DBH=1.1833×D0.9267 D: 地上高30cmでの直径(cm)W=0.043DBH2.76   W:推定現存量(dry weight,kg)各年の蓄積量は当年と前年のWの差とした。各年の蓄積量は個体間に差はあるものの、各個体とも成長が良好な年と不良な年のパターンがほぼ一致したため、各個体の平均値を解析に用いた。3.結果年輪解析を行った結果、樹齢は28__から__60年であり、現在でも成長の減衰は見られず成長途中であることがわかった(図1)。コナラは試験地の優占樹種であるので、本試験地の森林は蓄積過程にあると考えられた。伐倒調査の他の結果をふまえると、最も樹齢の高いものが約120年であり、明治時代に行われた緑化工以前には森林が存在しなかったこととつじつまが合う。コナラに関しても、最も樹齢の高かった個体で成長の減衰は見られず、本試験地の森林は蓄積過程にあると言えるであろう。平均蓄積量は最も少ない年で8.87kg・year‐1、最も多い年で19.24 kg・year‐1と、2倍程度の変動が見られた。今後はさらに樹種数・サンプル数を増やして解析し、森林の長期的な蓄積量の推定を試みたい。 

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© 2003 日本林学会
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