我々は次の目的でスギの小枝葉の遮光効率の樹冠内変異を明らかにした.(1)樹冠内の光減衰や生理生態情報に重要な小枝葉の遮光効率の測定データを基礎情報として蓄積する.(2)遮光効率の鉛直方向および水平方向の変異を調べることで,小枝葉レベルでの光環境への適応を調べる. 樹高12m__から__17mの正常な樹冠を持つスギ6個体の樹冠の南側と北側から小枝葉を採取し,Stenbergら(1995)の方法により15度刻みで撮影した画像からシルエット面積を測定し,シルエット面積と乾燥重量の比 SMAS(φ)で乾燥重量あたりの遮光効率を表すことにした. SMAS(φ)の平均値SMAS-mは5__から__20cm2g-1で変化し,地上高の増加に伴って低下した.この傾向に斜面の違いや樹冠面による違いは見られなかった.地上高によるSMAS-mの変化は針葉のSLAの違いのみでは説明できず,より低い部分の小枝葉は自己被陰を少なかった.SMAS(φ)の角度依存性は地上高が高くなるほど大きく,この傾向は樹冠の南側の枝葉で強く見られた.