日本林学会大会発表データベース
第114回 日本林学会大会
セッションID: D16
会議情報

T11 キクイムシと菌類をめぐる諸問題:全体像を理解するために
カシノナガキクイムシの人工飼育
*野崎 愛小林 正秀梶村 恒上田 明良北島 博後藤 秀章
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

カシノナガキクイムシ(以下カシナガ)の効率的な防除法を開発するには、未解明な部分が多いカシナガの材内生態を解明する必要がある。そこで、浸水丸太にカシナガ成虫を接種し、定期的に割材した。その結果、交尾直後に産下された卵から孵化した幼虫が、17日程度で終齢に達し、約20日後に孔道が枝分かれした。このことから、幼虫が分岐孔の掘削者であることが示唆された。次に、ビンに人工飼料を詰めて、カシナガ成虫を接種し、ビン壁面に現れた孔道内の生態をビデオ撮影した。その結果、終齢幼虫が分岐孔の掘削者であるとことが確かめられた。また、幼虫によって卵が分岐孔内に運搬され、幼虫が餌である酵母を培養するような行動を示した。以上のことから、先に生まれた終齢幼虫が坑道を掘り、卵を運搬し、餌を培養しすることで、同腹の妹弟の世話をしている可能性が示された。つまり、カシナガの幼虫は真社会性の生物のにおけるワーカー的役割を担っている可能性がある。幼虫尾部から出る乳白色の液体を他の幼虫が吸うような行動も観察されたが、これも真社会性の昆虫に見られる栄養交換である可能性が高い。このように、カシナガが真社会性への進化の謎を解明する好材料であると考えられた。その他、カシナガが太い木を好むのは、大断面の方が長い孔道が形成でき、繁殖に有利なためであることが証明できた。また、線虫やダニの繁殖が孔道内におけるカシナガの死亡要因であることも示唆された

著者関連情報
© 2003 日本林学会
前の記事 次の記事
feedback
Top