日本林学会大会発表データベース
第114回 日本林学会大会
セッションID: I01
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自然公園におけるキャンプ利用の変化と行動分析
国立公園大山・蒜山地区を事例に
*伊藤 みゆき横山 智彦川村 誠
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抄録

1. 目的
 キャンプ活動そのものは、元々長距離移動に伴う必要不可欠な生活行動であった。近年、レクリエーション利用としてのキャンプの普及により、家族中心のキャンプが増え、設備面ではオートキャンプの整備が急速に広まった。現代のキャンプは、教育キャンプのように1日をスケジュールに追われて過ごすキャンプとは異なると考えられる。本研究は、国立公園大山を事例に、キャンプ場での滞在者の時間別行動に着目し、自然公園における現在のキャンプ特性を明らかにしようとした。
2. 調査地概要
中国地方の最高峰、大山(1709__メートル__)を擁する国立公園大山地区は、1936(昭和11)年に公園指定され、63(昭和38)年には蒜山地区、隠岐島、島根半島、三瓶地区の追加指定を受けて、公園名も大山隠岐国立公園と改称された。 大山・蒜山地区には現在14ヶ所のキャンプ場がある。その中でも比較的規模が大きく、利用人数も多い、3ヶ所を調査対象地とした。1)下山キャンプ場:大山登山口や大山寺に近い。600人まで収容でき、一般キャンプのみである。2)鏡ヶ成キャンプ場:大山、蒜山の中間に位置する。1000人まで収容でき、調査時は一般キャンプのみだった。3)蒜山高原キャンプ場:蒜山高原に位置するオートキャンプ場である。700人まで収容できる。
3. 方法
 各キャンプ場利用者を対象に、アンケート調査を行った。調査票を元に直接聞き取り調査を行い、利用者の情報(年齢、グループ、地域、宿泊数、キャンプ経験回数等)に加えて、キャンプ場の到着から出発までの行動を時間ごとに記録した。
4. 結果
 (1)各キャンプ場利用者の情報アンケート調査から各キャンプ場利用者の情報をまとめた。利用者全体を居住地別でみると大阪・兵庫が最も多く(41%)、ついで岡山・広島(28%)、鳥取(14%)となった。また、全体の71%が家族連れだった。
 (2)行動特性
 滞在中の行動内容は「食事時間」・「自然体験」をはじめを8種類に区分された。1日の時間毎にみたキャンプ場別・個別利用者別の行動内容からの行動表を作成した。
 行動表の内容から各キャンプ場の利用者を、__I__「キャンプ場満喫型」、__II__「外出重視型」、__III__「寄り道型」、__IV__「登山型」の4つにタイプ分けを行い、さらに、各タイプ毎にその代表的な個別利用者の行動表を示した。
 __I__:キャンプ場到着から出発まで、徒歩圏内の外出行動はあるが、家族で虫捕りをするなど、キャンプ場内の行動が多くの時間を占める。出発後は直接帰宅する。
 __II__:キャンプ場到着から夕食前までレクリエーション施設などへ向け車で外出し、その後は出発までキャンプ場内で行動する。連泊の場合は、2日目に外出行動が多くみられる。
 __III__:キャンプ中はキャンプ場内で行動し、到着前、出発後に外出行動をする。特に連泊の場合、キャンプは「旅の途中の宿」として位置付けられている。
 __IV__:登山目的で泊まり、キャンプ場到着時間は遅い。食事はレトルト食品を利用するなどキャンプのための簡単なメニューで済ませることが多い。連泊の場合は2日目に登山する利用者が多い。登山以外の時間は、キャンプ場の行動に重点を置く利用者と外出行動に重点を置く利用者に分かれる。また、単独のキャンプが多いのもこのタイプの特徴である。
3)行動タイプとキャンプ場特性
 キャンプ場別に行動タイプと宿泊数のクロス集計を行った。「下山」では1泊、連泊とも__IV__が多い。「鏡ヶ成」では__I__、「蒜山高原」では__II__、__III__が多い。なお、連泊利用者ほど「外出重視型」が多くなる。
5. まとめ
 大山・蒜山地区のキャンプも、家族キャンプに傾いている。登山のように目的が明確な場合を除くと、キャンプ場を楽しむ「満喫型」と、キャンプを宿泊場所として周辺に出向く「外出型」に分かれる。何れも、積極的な自然体験を求めるよりもキャンプ場ではのんびり過ごす時間が多い。このことが自然公園のキャンプ場整備を、水場やトイレ施設の高度化やオートキャンプへの転換に走らせている。

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