日本林学会大会発表データベース
第114回 日本林学会大会
セッションID: F20
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生態
三宅島噴火災害跡地のハチジョウススキにみるAM菌について
*岡部 宏秋山中 高史
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キーワード: AM菌, 植生回復, 三宅島, 火山
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抄録

1.目的 2000年7月の三宅島噴火による火山ガスの流下、降灰や泥流によって、島内植物の多くが大きな被害を受けた。特に雄山中腹から上部の植物は、ほとんど枯れ、災害復興対策上大きな問題を抱えている。ここでは、生残植物の増殖を図るため、植物根系と密接な関わりを持つ共生菌に注目した。特に厚降灰土で生残した植物、緑化に適用可能な種としてハチジョウススキ(以下ススキ)の根系と関わり生残している可能性のあるアーバスキュラー菌根菌(AM菌)およびススキの生育と降灰土との関わりについて報告する。2.調査方法 ススキ根系と共生するAM菌の実態を、現地でのススキ播種や土壌採取によって評価した。1)現地土壌におけるバイオアッセイ 2002年4,5月中旬に周回林道沿い(牧場、牧場上、伊ヶ谷、三の宮、火の山、金曽地区、各10-20cmの降灰土層)の緩傾斜地を調査対象とした。各調査地は降灰土の表層(灰区)、降灰土と埋った旧土層の混合(灰埋区)および降灰土を除去し土層(埋区)とし、伊豆大島産のススキ(護頴含む)を約30g播種した。2)持ち帰りススキ株土壌によるバイオアッセイ 各調査地点、各区から土壌を持ち帰り、ただちにススキ播種によってバイオアッセイを行った。さらに各プロット近傍、ふれあい広場、薄木地区海抜200m地点、新澪池周辺、畜産試験場内の圃場地内の各ススキ株の一部を掘り取り、その株や土壌を接種源として、上記と同様に播種した。なお、2001年度には予備的な胞子計測を行った。 ポットの管理は、播種後1ヶ月は表層土の高湿度を保ち、その後は表面が十分に乾燥した後に水を加え、1ヶ月に一度、窒素源を控えた肥料を約20mm添加した。これらは、11月中旬からポットの土壌中層位を切り取り湿式ふるい分け法によって胞子数を計測した。3.結果1)現地土壌におけるバイオアッセイ ススキは、金曽では火山ガスによって、また牧場、三の宮では降灰土の流入で消滅し、被害の継続がみられた。他地点のススキは、灰区では極めて生育不良、灰埋区でやや良好、埋区では良好な生育を示し、特に伊ヶ谷では葉長60cmになる個体がみられた。一方、AM菌は、灰区ではほぼ皆無、灰埋及び埋区では皆無地点があったものの伊ヶ谷のように著しく増殖した地点もあった。2)持ち帰り土壌によるバイオアッセイ 持ち帰った土壌から、各地点におけるススキ単稈あたの生育は灰区(上、下層)で不良の傾向にあった。AM菌の生残は、灰区で少なく、灰埋区では1区で増殖がみられ、埋区では種数は少ないものの多地点でその潜在性を示した。一方、各地点近くから採取したススキ株土壌では類似した種類の増殖がみられた。前年の予備調査では、胞子の生残は極めて少なく、数種(不明)の枯死胞子を認めている。4.考察 今回の噴火から、降灰土層の不毛、埋土層では限られた種ではあるがAM菌の潜在性、生残ススキ株の根系にAM菌の生残が確認された。AM菌のアッセイに問題があるものの、降灰後2年を経過して、なお生残していたこと、一方では種数が少ないことで種の一部が消滅してしまった可能性が読みとれた。2001年に予備的に行ったアッセイでは枯死した胞子をいくつか見ているが、それらは今回増殖していなかった。降灰による影響は、植生だけでなく、共存するAM菌にも多大な影響を与えたと考えられる。

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© 2003 日本林学会
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