人工知能
Online ISSN : 2435-8614
Print ISSN : 2188-2266
人工知能学会誌(1986~2013, Print ISSN:0912-8085)
協調的エージェントシステムの為のフェロモン型コミュニケーションの設計法
川村 秀憲
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2000 年 15 巻 6 号 p. 992

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抄録

本論文は, 社会性昆虫における生物学的フェロモンコミュニケーションのマルチエージェント工学におけるモデル化と, その応用に関するもので5章よりなる.第1章では生物学と工学における関連研究を概観している.また, それらの研究に立脚してフェロモンの本質を場として捉え, ベクトル空間としてモデル化することでフェロモン型コミュニケーションに基づくエージェントシステムの統一的定義を提案している.続く第2章ではColorni等の最適化アルゴリズムであるアントアルゴリズムに着目し, その欠点を明らかにした上でその克服のため, 複数コロニーの概念とコロニーレベルフェロモン型コミュニケーションを導入したMultiple Ant Colonies Algorithmを提案し, 巡回セールスマン問題に対する性能評価実験によって有効性を示している.第3章ではフェロモン型コミュニケーションに基づく分散型協調問題解決アルゴリズムを提案し, 多目的最適の要素をもつ配送経路問題への適用でその有効性を示している.第4章ではフェロモン型コミュニケーションの自律的獲得に関して述べており, そこではニューラルネットワークと遺伝的アルゴリズムに基づくエージェントが, 動的な環境において進化的コミュニケーションと創発的群知能に基づいて問題解決が図れることを実験によって示している.第5章では一連の研究成果を取りまとめ, 結論と今後の展望を述べている.

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© 2000 人工知能学会
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