昭和歯学会雑誌
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乳前歯の歯冠部における色調とその硬度および組成に関する基礎的研究
野島 洋
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1990 年 10 巻 2 号 p. 163-176

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抄録

本研究の目的は乳前-歯歯冠部の色調とその硬さ, および組成の関係を明らかにすることにある.試料は, 本学小児歯科に来院した小児56名より得られた健全乳前歯77歯である.なお, 比較のため永久歯 (5歯) も使用した.すべての歯は測色計 (高速分光光度計) で色調を測定し, さらに乳歯の14歯はビッカース微小硬度の測定, およびCaとPの濃度を分析した.その結果, 以下の知見を得た.1.乳歯の象牙質色は, 永久歯の象牙質色に比べ, 黄色の度合を示すb*値が低い値を示した.また, 永久歯の象牙質色のb*値はその歯冠色 (天然歯の歯冠部の唇側からみた色調) に比べ有意に高い値を示したのに対し, 乳歯では有意の差はみられなかった.2.エナメル質の硬度が高い乳歯ではエナメル質色において透明度が高く, 歯冠色では黄色の度合を示すb*値が低い傾向がみられた.一方, エナメル質の硬度が低い乳歯のエナメル質色は透明度が低く, 歯冠色では黄色の度合を示すb*値が高い傾向がみられた.3.乳歯の透明度が高いエナメル質は, 透明度が低いエナメル質と比べ, 酸抵抗性が強いことが示唆された.4.歯の色調と組成との間には相関性がみられなかった

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