放射線は生体に対し、分子、細胞、組織、個体レベルにおいて様々な影響を与える。細胞は、生死の概念を適応できる最小単位であり、その生死は、より高次のレベルに大きな影響を与える。古典的放射線生物学では、標的説やLQモデルによって線量―細胞生存率曲線に基づいた細胞死の多寡のみが議論され、質的問題としての細胞死様式について、大きく注目されることはなかった。その後、アポトーシスに関する分子メカニズムの解明が急速に発展することで、その引き金や執行の分子メカニズムが明らかとなり、アポトーシスにも様々な形態があること、さらにnon-apoptoticな細胞死にも多様な様式が存在することもわかってきた。それぞれの細胞死様式の分子メカニズムならびに細胞生物学的特徴の詳細を捉えることは、放射線の生体に対する影響や放射線治療効果を考える上で極めて重要であると考えられる。本シンポジウムでは、アポトーシス、マイトティック カタストロフ、老化様増殖停止、そしてオートファジーについて、それぞれの分野の第一線の研究者に、最新の知見と展望について論じて頂き、放射線による細胞死の全貌について理解を深め、おのおのの意義について考察する。