日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第51回大会
セッションID: EO-1-4
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放射線治療・修飾
パルスラジオリシス法および質量分析法を用いた3-ニトロチロシンとその誘導体の一電子酸化反応に関する研究
*林 銘章石 偉群付 海英室屋 裕佐勝村 庸介徐 殿斗柴 之芳
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抄録

パーオキシナイトライト(ONOO-)や窒素酸化物(NOx)等の活性窒素種(RNSs)は、チロシンのニトロ化に代表されるように、芳香族アミノ化合物(チロシンやトリプトファン等)に対し様々な修飾を行うことが知られている。特に、3-ニトロチロシン(3-NT)は、細胞内の窒素化ストレスを測る上で重要な指標化合物と考えられ、この反応性を調べることは非常に重要である。そこで本研究では、3-NTおよびその誘導体の酸化性ラジカルとの反応性を調べた。まずナノ秒パルスラジオリシス法を用いて、3-NT、N-acetyl-3-nitrotyrosine ethyl ester (NANTE )、およびGly-nitroTyr-Gly含有3-NTについて、酸化性ラジカル(N3ラジカル)との反応速度定数を調べた結果、それぞれ9.8±0.7x108, 8.0±0.4x108 and 9.1±1.0x108 [L mol-1 s-1]と求められた(pH 6.0)。チロシンやペプチド含有チロシンの場合より一桁大きい値であることから、ニトロチロシンやその誘導体は酸化性ラジカルと非常に高い反応性を持つことが分かった。また、上記化合物とN3ラジカルの過渡的生成物の吸収スペクトルを測定した結果、チロシルラジカルによる415nm近傍の吸収が見られたことから、一電子酸化反応によるものと同定された。更に、Electrospray ionization mass spectrometry (ESI-MS) やTandem mass spectrometry (MSn)を用いて最終生成物の質量分析を行った結果、二量体が形成されていることが分かった。細胞内におけるタンパク質の凝集は、3-NT残基の二量化反応を介して引き起こされるのではないかと推測される。

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© 2008 日本放射線影響学会
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